虎の子7 運動会編
- RICOH RICOH
- 2024年11月17日
- 読了時間: 5分
パンデモニウム宮殿の野外広場に、特設された競技会場
魔界教育を終える際に行われるこのイベントは
未来の官僚となる魔材を見定め、
適性を判断する重要な意味合いが込められている
目覚ましい活躍をした者には、
現職の最高幹部から直接スカウトされる事もある
主催者は中央の玉座に腰を据える大魔王ダンケル
ダンケルの補佐と、催事全般を取り仕切りながら
夢幻月詠としてイベントに華を添える副大魔王イザマーレ
イザマーレの専任警護に就きながら
ウエスターレンも鋭い目をより一層光らせている
文化局長ベルデと、軍事局バサラ
そして最悪拷問官セルダも、来賓席に優雅に座る
ラァードルとスプネリアは雷神界からの来賓として招かれている
シューゾウの養母プルーニャとLily‘s、参加魔の養父母たちも招待され
各々の活躍を期待しながら観覧席に座っている
「本日の開催に当たり、場を大いに盛り上げる為、
スペシャルゲストを用意した。注目せよ」
特別ゲストとして呼び出された悪魔の存在にざわめきが起こる
「マジかよ!!」
「あいつ…確かに運動神経は抜群だからな」
そんな周囲の喧騒も飄々と受け流し、仁王立ちする悪魔―ラドルの元に
イザマーレとリリエルが歩み寄り、赤いハチマキを渡す
「(´∀`*)ウフフ…はい、これ。楽しみにしてるわ。頑張ってね♪」
「吾輩も楽しみにしているぞ。怪我のないようにな」
「ありがとうございます!…まあ
俺にはこれくらいしか才能ないから(笑)」
「イザマーレ、そろそろ良いか。場面転換するぞ」
ウエスターレンの呼びかけに頷き
イザマーレは一旦、控室に戻り、儀式用の装束に衣装替えする。
サポートに廻りながら、2 枚目の衣装を手にしたリリエルは
目を輝かせる
「閣下…これ…///////」
「競技の間のお楽しみな♪リリエル、お前とペアじゃなくてすまないな」
「ええ~キャー(≧∇≦) 絶対素敵じゃないですか♪♪」
「(笑)では、とりあえず行ってくるぞ。」
嬉しくてキャーキャーはしゃぐリリエルに微笑み
謡の儀式に向かうイザマーレ
数刻後、
会場に響き渡る光の言霊に風が動きを止め、
草花までもが酔いしれる
闘う意欲を鼓舞させる力強い謡に、
緊張の面持ちだったシューゾウも拳を握りしめる
競技が始まると…
大方の予想通り、シューゾウとラドル
運動神経抜群の2魔による独断場になっていた
「へえ~…こうして見ると、やっぱり素敵なんだね、ラドル」
「こんな姿を若かりし頃に見ていたら…そりゃ、恋にも落ちるか(笑)」
リリエルから手渡された赤いハチマキの効果なのか、
いつも以上にイケメンに見えるラドル
「シューゾウも、負けてないよ。地道な努力は裏切らないってホントね」
「うんうん…リリエルちゃんは高根の花だろうけど、
寄ってくる女性はいくらでも現れるんじゃないかなあ…」
さわやかなスポーツの汗を光らせ、
気持ち良さそうに競技に挑むシューゾウの髪には
養母プルーニャがアイロンかけをした白いハチマキ
「努力家で勤勉だし…将来は有望株かもね。
情報局なのか軍事局なのか…引く手あまたじゃないかなあ」
観覧席で彼らの活躍を楽しみながら口々に感想を言い合うLily‘s
「でもさ…」
ふと、それぞれの推しの姿に視線を送る
「やっぱり、長官の脚の長さは罪よね~♪」
「バサラ様の恰好、やばくない?軍服姿なのにツインテールとか(笑)」
「麗しいよねえ。後でアーカイブ残してくれるかなあ」
「代官はシューゾウの出世には関心ないのかしら…
世仮の人間さんにも堂々と胸を張れるよね」
その時、応援席に現れた副大魔王の姿に目を奪われ、
うっとりと酔いしれる観衆
裾の長い学ランに、金髪を逆立てず、黒の長いハチマキをしている
背中には金色で刺繍された「応援団長/副大魔王」の文字…
「…こりゃあ、決まったな」
「ああ💦もうリリエル様ってば、お目目がハートマークになってますよ💦」
午前の種目が終わり、昼食タイムになった
選手として活躍していた悪魔達も
観覧席に居る関係者たちと共に仲良くお弁当タイムだ
「シューゾウ、よく頑張ったね。ほら、よく噛んで食べな。」
「ありがとう、おかん。」
プルーニャお手製の塩むすびをモグモグしながら
午後の競技に向けて、集中力を高めている
大活躍だったラドルは、オルドが作ってくれた特製弁当を食べながら
主賓席でイザマーレの隣で微笑むリリエルをこっそりと見つめていた
「…午後にやる走り高跳び…見てろよ、釘付けにしてやる」
かつてのように、自分を見つめる事はないが
イザマーレの隣で幸せそうに微笑むリリエルを
誰よりも誇らしく思うラドルだ
主賓席で、リリエル特製のお弁当を味わった後
リリエルを連れて観覧席を練り歩くイザマーレ
観客にいる旧知の貴族悪魔と挨拶を交わしていく
リリエルをエスコートしながら、ハチマキをたなびかせ
気品溢れる副大魔王
隣で嬉しそうに寄り添うリリエル
背後で2魔を固く警護するウエスターレン
時折、笑顔で言葉を交わしている
3魔の絵に描いたような美しさに森羅万象が酔いしれる
強固な絆が放つオーラに、
3魔の真骨頂を垣間見たシューゾウも
さすがに何かを感じ取ったようだ
「これは…どういう事でしょう…
敗北感の中に尊敬と畏怖の念すら感じるのですが…」
正座をして拳を握りながら
新たに湧き上がる自分の思いを素直に見つめるシューゾウ
「リリエル様への思いを断ち切れるとは…思いません。
ですが、こんな僕でも、リリエル様を…
いえ、リリエル様のいる魔界をお守りするべく力を尽くしたい…」
「…シューゾウ…よく言った!さすが、私の自慢の息子だよ。」
「おかん…」
「でも、今日はまだ、ええんちゃうか?
リリエル様への想いに区切りをつける為にも、
午後は目一杯、頑張っておいで!!」
そう言って鼻息荒く、水筒のお茶を渡すプルーニャ
「!!」
何も言わずに水筒を受け取り、黙々とウォームアップを始めるシューゾウ
様々な思惑の中、午後の競技が始まる
観衆の視線を煽り、軽やかに走り高跳びをクリアするラドル
雑念を振り払うかのように、俊敏な動きで駆け抜けるシューゾウ
彼らの活躍を静かに見守りながら、
厳かに佇む副大魔王に寄り添い、嬉しそうに微笑むリリエル…
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