霊魂の暗躍
- RICOH RICOH
- 2024年11月17日
- 読了時間: 4分
植物の毒に犯され、徐々に夢幻世界の奥深くへ誘われるスプネリア
ずっと一緒に居たかった
ずっと支えて行きたいと願っていた
心の奥底に仕舞い込みながら、燻り続けた思いに囚われ
自らの意思で歩みを進めていく
その時だった
『大事なものは、いつでも突然奪われるのよフフフ…』
どこからともなく聞こえる声が、幾重にもこだまする
「!?」
驚いて周囲を見回すが、スプネリア以外、誰も居ない
ふと足元を見ると、自分の影が揺れ動き、そこから飛び出したかと思うと
強烈な視線で睨み付けてくる
あまりの事に怯え、固まり続けるスプネリアの目の前で
徐々にその塊は形を成していく
「!!!!」
ついにヒト型になり、自分に振り返る存在に驚愕する
「…り…リリエル様…?」
思わず問いかけてしまうのは、
普段の彼女からは想像も出来ないほど闇のオーラに包まれ、
彼女のトレードマークともいうべき微笑みが一切ないからだ
「誰だっていいじゃない。これまでの世界をすべて投げ捨てて
ifの世界に行きたいんでしょ?」
「…!…///////」
「ほんと、おめでたい人ね。
思いを伝えていたら、後悔しなかったと思う?
そこで全てが終わってしまうこともあるのにね…フフフフフフ…」
相変わらず、自分を睨み付けたまま
彼女のやけに高らかな笑い声だけが耳について離れない
「気持ちを伝えてないのだから
どうなってるかなんて判らないじゃない!」
思わず苛立ち言い返すスプネリアに、
更に眼力を強くしながら睨み付けてくる彼女
「そんなに言うなら、見に行ってみる?」
更に深い闇の眠りの中に堕ちていくスプネリア
………
人間のラァードルとずっと一緒に過ごしていたスプネリア
好きだと気持ちを伝えたら、彼も同じ想いだったと知り
幸せを感じていたが、時々何かを1名で考え込み苦しむ
ラァードルの姿を見かけるようになる
自分の思いを伝えただけで苦しむ姿を見る事になるとは思ってなかった
ただ、2名で幸せな時間をずっと過ごして行きたかった
考え込むラァードル、そんな姿に不安になるスプネリア
やがて2名の歯車は狂い出し、喧嘩が絶えなくなる
そうしてラァードルはスプネリアの前から姿を消した
同時に下腹部に強烈な痛みが走った
気が付いた時には流産し、二度と子が出来ない身体になっていた……
…………
目の前の光景に、
言葉を失い、足を竦ませているスプネリアの前に、
再び闇が訪れ、彼女が姿を現す
「ifの世界で、貴女の望みは手に入らない。
だって一番の幸せが現実の世界にあるんだもの
こっちにずっと居続けてる私のようにならない方が良いよ?」
「……」
強烈に睨み付けてくる彼女の視線に驚愕しながらも
不思議な既視感に囚われるスプネリア
それでも拭えない違和感。
そして、たった今聞いた、彼女の言葉………
「こっちにずっとって…やはり貴女はリリエル様ではないのね?」
スプネリアの問いには一切答えず、
目の前にひとつの空間を映し出す
現実の元老院の様子を見て、驚愕するスプネリア
「あなたがこの世界で彷徨ってる間に
大事な御方は誰かに奪われてるのよ
フフフ…良いの?それで……フフフフフフ…」
「!?それ…どういうこと?」
「あなた…植物の毒に犯され、クローンに器を支配させたまま
こちらの世界に迷い込んでしまったのよ。あなたそっくりのクローンに
可愛らしく寄り添われたら…大事な方の心まで奪われてしまうかもね
ククク………アハハハ………」
「えっ?! 私の身体奪われたの?! このままワケの判らない世界で
居なきゃいけないの?! やっと……やっと……再会したのに……
そんなのいやだ!元の場所、世界に戻りたい!!
殿下の傍に居たいの!!」
幾重にもこだまする彼女の高笑いを振り切るかのように、
駆け出すスプネリア
元の世界に戻りたいと強く願った瞬間、
2匹の蛍がとこからともなく現れ
淡い光を放ちながらスプネリアの周りを飛びまわる
まるで、付いておいでと言わんばかりだ
迷わず蛍が進む方向に歩みを変え、駆け出した
コメント